
地方の中小建設会社のISOの運用のヒント〜ISOの取得の運用・メリット〜

お断り この起稿は、2012のものです
ISO取得、運用を会社経営に活かす
・経営事項審査(以後「経審」)評点(客観的)アップ
・資格審査(主観的)の評点
・工事成績評価点数の確保
・総合評価落札の施工計画の提案策定
今,この記事をお読みに始めようとされる方ありがとうございます。
あなたの顔が見えないのが残念ですが,私なりに地方の中小建設会社(社員数50名以下)の経営者様,ISO担当責任者を想定して書きました。よってこれから書く内容の一部の経審に関する内容については,営業担当の方にもお伝え頂ければと思います。
1.地方の建設会社のISO9001,ISO14001の取得状況
それでは,早速「地方の中小建設会社のISOの運用のヒント」について書きたいところですが,
その前にどれほど,地方の建設会社でISO9001,ISO14001が取得され,普及しているかを,
下記に示します。
(参考)九州各県のISO9001,ISO14001の取得状況 (弊社24年1月末調べ)
鹿児島県でISOの取得が飛び抜けて多いことが分かります。
福岡県 | 佐賀県 | 長崎県 | 熊本県 | 大分県 | 宮崎県 | 鹿児島県 | 沖縄県 | |
ISO9001 | 283 | 71 | 74 | 151 | 99 | 164 | 436 | 317 |
ISO14001 | 99 | 26 | 18 | 23 | 8 | 109 | 303 | 160 |
調査企業数 | 8841 | 998 | 2864 | 3321 | 2176 | 2617 | 3404 | 2539 |
2.どうして建設業界でISO取得がこれほどまでに進んだのでしょうか?
もうご存知の通り,建設業独特の経審という制度にISO取得の評価が導入されているからです。
この経審については,多く語られていますが,表題について書くうえで避けて通れない内容ですので,
ここでも簡単に説明させて頂きます。
経審とは,公共工事の入札に参加するために建設会社に課された審査で毎年受けなければなりません。
そして国,都道府県等は,毎年或いは2年に一回(定期)の資格(等級・格付け)審査を行い入札参加
名簿の作成を行い,工事を発注する資料にしています。
よって仕事を受注したい建設会社は,この経審の経営規模等評価結果通知書 総合評定値通知書の評点
(以後 経審評点)を上げることに努力されます。ここにISO9001,ISO14001の取得
について加点される仕組みがあるのです。
3.経審を活用した経営指導
私がこの経審評点のアップ対策の指導を始めたのが,今から20年ほど前のことで当時,某税理士会
より経審評点アップセミナーの講師の依頼を受け300人ほどの公認会計士,税理士,職員,銀行員の
方が参加され一生懸命拝聴して頂きました。
また某土木会社様からは,どうしても総合評点P点が1000点欲しい,工事の入札参加での共同企業
体(JV)の親での参加要件が1000点以上だからということで相談をうけたこともあります。
また数百億の再開発事業体の担当者様から工事の施工業者の指名選定基準を考えているので,
どのようなことを考慮すればいいかという相談を受けたこともありました。
そして最近では経審の評点を上げるのではなく,下げたいので来て欲しいということで山口県の
土木会社様(経営内容の良い)にお伺いしたこともあります。
このように経審の評点は,建設会社の公共工事を受注していく経営の中で避けて通れないテーマ
なのです。
4.それではISO取得は,建設会社にとって,経審,資格審査,入札制度等でどのように関係して
くるか,考えてみたいと思います。
ご存知の通り,ISO取得は下記のような場合に関係してくるのではないでしょうか?
- 経審(客観的評点)ISO9001,ISO14001取得 各5点
- 資格審査(主観的評点)(別掲資料を参照)
ISO9001,ISO14001,OHSAS18001取得 各3点から70点
- 工事成績評価点数 受注し施工した工事に対しての発注者の評価 ※ISOの仕組みを
- 活かせる総合評価落札方式(簡易型) 価格に加えて価格以外の要素を含めて総合的に
- 評価する方式
施工計画の提案が評価される ※ISOの仕組みを活かせる
5.経審(客観的)のISO取得の評価は,技術評価ではない。企業評価である。
国は,“技術と経営に優れた企業”に仕事を受注していく環境を整備しています。と言っています。
そしてそのような会社が生き残れますよと。
どうして経審(客観的)のISO取得の評価は,企業評価なのか?それは,昨年の4月の経審の
改正内容で分かります。
経審では,工事の種類毎(例えば,土木一式工事,建築一式,電気工事など)のISO9001,
ISO14001の取得で,評価していません。あくまでも会社として取得していれば,各5点
ずつ加算される仕組みになっています。
また本社のみの取得では,評点が加点されなく営業所登録しているすべてでISO9001,
ISO14001を取得していないと,経審では,5点は加点されません。ここにISOの取得は,
技術的評価をしていない根拠があります。
それでは,ISO取得の技術上での評価は,どこで行われているのでしょうか?
私は, それは,ISO9001,ISO14001,OHSAS18001を取得しておれば
4.③受注した工事の工事成績評価点数,4.④総合評価落札方式(簡易型)の施工計画の提案で
ISO取得が活かされると思っています。
6.資格審査の主観的評価の現状について
①北海道,秋田県,岡山県,長崎県,佐賀県,宮崎県等は,昨年の経審の改正による評価加点になったため
主観的点数では加算しなくなった。
②佐賀県,宮崎県,千葉市においては,エコアクション21,ISO14001の経審の客観的点数との
重複適用なし。
③東京都,山梨県では,ISO9001,ISO14001の新規取得,更新審査を受けているか否か
により評点に差異を設うけています。
④福井県,岡山市, 福岡市の評点は,経審の工事種別総合数値P(経審点数)に乗じて加算
⑤東京都は主観点数に加算率で加点をしています。
⑥三重県,滋賀県は,経審の改正を受けて,主観点数を引き下げて調整
⑦愛知県等にあっては,経審の改正での客観的点数加点になったため,従来の主観的点数加点を
廃止した。
⑧OHSAS18001,COHSMSを資格審査で加点した等道府県は少ない。
7.全国の都道府県, 政令指定都市の資格審査のおけるISO取得の加点状況
(24年2月初旬現在)
都道府県 | 資格期間 | 品質 | 環境 | 安全 | 資格期間 | 品質 | 環境 | 安全 |
9001 | 14001 (エコ21) | 18001又はCOHS | 9001 | 14001 (エコ21) | 18001 又はCOHS | |||
北海道 | 23,24年度 | 6 | 3(2) | - | 25,26年度 | 0 | 0 | - |
青森県 | 24,25年度 | 10 | 10(5) | 10 | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
岩手県 | 24,25年度 | いずれか取得で5、両規格取得でも5 | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
秋田県 | 23,24年度 | 15 | 15 | - | 25,26年度 | 0 | 0 | - |
宮城県 | 23,24年度 | 10 | 10 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
山形県 | 23,24年度 | 20 | 20(10) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
福島県 | 23,24年度 | 10 | 10 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
東京都 | 23,24年度 | 取得後未更新 主観点数×3% 取得後更新 主観点数×5% | 取得後未更新 主観点数×3% 取得後更新 主観点数×5%(同) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
千葉県 | 24,25年度 | 3 | 3(2) | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
埼玉県 | 23,24年度 | 30 | 10 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
茨城県 | 23,24年度 | 10 | 10(10) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
栃木県 | 23,24年度 | 10 | 10 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
群馬県 | 24,25年度 | 0 | 0 | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
神奈川県 | 23,24年度 | 7 | 3(3) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
新潟県 | 24,25年度 | 7 | 7 | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
長野県 | 23,24年度 | 15 | 15(10) | 15 | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
山梨県 | 23,24年度 | 新規10,更新20 | 新規10,更新20 | 15 | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
石川県 | 23,24年度 | 15 | 15(10) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
富山県 | 23,24年度 | 10 | 5 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
福井県 | 23,24年度 | 総合評定値×2/100 | 総合評定値×2/100 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
静岡県 | 23,24年度 | 10 | 10(10) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
愛知県 | 24.25年度 | 0 | 0 | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
続き
都道府県 | 資格期間 | 品質 | 環境 | 安全 | 資格期間 | 品質 | 環境 | 安全 | |||
9001 | 14001 (エコ21) | 18001 又はCOHS | 9001 | 14001 (エコ 21) | 18001 又はCOHS | ||||||
三重県 | 24,25年度 | 3 | 3 | - | 26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
岐阜県 | 24年度 | 20 | 10 | - | 25年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
滋賀県 | 24,25年度 | 8 | 8(24年限定5) | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
京都府 | 23,24年度 | 10 | 10 | - | 25,26年度 | 24年11月発表予定 | |||||
奈良県 | 23,24年度 | 20 | 15 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
大阪府 | 23,24年度 | 0 | 0 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
兵庫県 | 24,25年度 | 16 | 16(16) | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
和歌山県 | 24,25年度 | 20 | 20(10) | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
岡山県 | 24,25年度 | 0 | 0(3) | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
広島県 | 23,24年度 | 0 | 0(10) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
鳥取県 | 24年度 | 10 | 10 | - | 25年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
島根県 | 23,24年度 | 20 | 10(10) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
山口県 | 23,24年度 | 20 | 20(5) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
香川県 | 23,24年度 | 20 | 20 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
愛媛県 | 23,24年度 | 10 | 10 | – | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
徳島県 | 23,24年度 | 10 | 10(5) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
高知県 | 23,24年度 | 0 | 20(20) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |||
続き
都道府県 | 資格期間 | 品質 | 環境 | 安全 | 資格期間 | 品質 | 環境 | 安全 |
9001 | 14001 (エコ21) | 18001又はCOHS | 9001 | 14001 (エコ21) | 18001 又はCOHS | |||
福岡県 | 24年度 | 0 | 0 | - | 25年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
大分県 | 23,24年度 | 10 | 10 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
長崎県 | 24年度 | 0 | 0 | - | 25年度 | 0 | 0 | - |
佐賀県 | 23,24年度 | 0 | 5(5) | - | 25,26年度 | 0 | 0(3) | - |
宮崎県 | 24,25年度 | 0 | 0(5) | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
熊本県 | 23,24年度 | 10 | 10(5) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
鹿児島県 | 23,24年度 | 20 | 20(5) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
沖縄県 | 23,24年度 | 20 | 20(5) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
政令指定都市
市 | 資格期間 | 品質 | 環境 | 安全 | 資格期間 | 品質 | 環境 | 安全 | |
9001 | 14001 (エコ21) | 18001又はCOHS | 9001 | 14001 (エコ21) | 18001 又はCOHS | ||||
札幌市 | 23,24年度 | 10 | 15 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
仙台市 | 23,24年度 | 10 | 10 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
さいたま市 | 23,24年度 | 20 | 20(20) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
千葉市 | 24,25年度 | 10 | 10(7) | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
横浜市 | 23,24年度 | 5 | 5 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
川崎市 | 23,24年度 | 10 | 10 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
相模原市 | 23,24年度 | 7 | 3(3) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
新潟市 | 23,24年度 | 20 | 10 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
静岡市 | 23,24年度 | 10 | 10(10) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
浜松市 | 23,24年度 | 10 | 10(10) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
名古屋市 | 23,24年度 | 資格審査に経審を導入, 主観的項目がない | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 | ||
京都市 | 24年度 | 10 | 10 | - | 25年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
大阪市 | 24,25年度 | 大阪府への登録の 有資格者名簿を共用。 制限付一般競争入札を採用 | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 | ||
続き
市 | 資格期間 | 品質 | 環境 | 安全 | 資格期間 | 品質 | 環境 | 安全 |
9001 | 14001 (エコ21) | 18001又はCOHS | 9001 | 14001 (エコ21) | 18001 又はCOHS | |||
堺市 | 24,25,26年度 | いずれか取得の場合50, 両方取得の場合70 | - | 27,28,29年度 | 未定 | 未定 | 未定 | |
神戸市 | 24,25年度 | 10 | 10 | - | 26,27年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
岡山市 | 24年度 | 総合評定値×4/100 | 総合評定値×2/100(3) | - | 25年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
広島市 | 23,24年度 | 5 | 5(5) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
北九州市 | 23,24年度 | 10 | 10(10) | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
福岡市 | 23,24年度 | 工事種別経審点数×3/100 | - | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
熊本市 | 23,24年度 | 5 | 5 | - | 25,26年度 | 未定 | 未定 | 未定 |
8.ISOの取得の運用・メリット〜ISO取得を建設会社の経営にどう活かすか?
ISOの取得,具体的な運用については,多くの方が各方面で多く語られていますので,私は,実際指導させて
頂いた経験を大まかに書かせて頂きます。
①私のISO指導のスタート
私がISOの指導を始めたのが,平成11年でした,今から12年ほど前です。
ISO9001の審査員研修コースに参加し,そのあとすぐにISO審査員研修機関のテクノファ
さんのISOコンサルタントコースの第1期生として参加させて頂いた頃です。また審査機関の
オ-プン説明会 でも,参加者の方と,意見のぶつかったこともあります。
それは,その当時,是正処置の仕方とか,内部監査の効果的な運用とか,マネジメントレビューでの
重要点など。
そういう説明が多く,私には,身近な建設会社さんの現場の悩みは,そんな次元の高いところには
まだまだ余裕がなく,行き着いていないと思っていたからです(現在もまだそんな状況ではない
かもしれません)。
当時弊社では,指導させて頂いたISOを取得された建設会社様を年1回,無料招待して情報交換会を
開催していました。
ISOの運用についてのテーマで話を進めて行こうとするのですが,ところがいつも出てくるテーマが
ISOの運用の以前の問題で,どうして社内にISOを定着できるかという参加者の悩みの声だったのです。
ISOは取得したにも関わらず,ISOそのものが見えてこないのです。
私が思うに,ISOを社内で定着させるには,社員教育,内部監査や安全大会や健康診断,法令順守の
チェック等の時期を会社の年間行事(スケジュール)に取り入れて,全社員が見える形から始めて下さい
と言いたいです。
②ISO取得構築時の注意点
私がISOの取得の指導で常に考えていることは,どれだけ多くの社員の人をISO取得の構築の
メンバーに巻き込めるかということです。
昔のISO9001:1994年度版の指導時期は,会社の多くの人が参加してISOを取得
されました。
ところが現在はどうでしょうか?一部の人,4人ほどが参加されてISO取得の準備をされるのが
普通ではないでしょうか?それは業務が忙しいから全員を参加させることができないという理由
からです。
参加させることが,出来なければ会議等でしっかり、川下まで伝えることが大事です。
このことは,ISO構築時の姿勢の影響がISO取得後の運営の成功、失敗に係ってきて,ISOが
何にもならないとか,メリットがないという声が出てきてしまう原因になります。
ISOは,社内の業務のルールを決めて実行していく,会社の仕組みを,全社員に見える形にしないと
上手くいきません。
ISO取得の構築の過程でいろいろな意見が出て,みんなで意見を出し合い進めていくのが大事
なのです。
昨年,鹿児島県のK社様にISO9001,ISO14001,OHSAS18001の3つを同時に
取得される指導をさせて頂く機会がありました。
その時に同じ県内で,その3ケ月前にも3つの規格を同時に指導取得されたH会社様のことをお話し
したら,その会社が出来たのだから,自分たちの会社も出来ないはずはないと一生懸命取り組まれました。
私が感心したのは,社長様をはじめとして,毎回の勉強会での配布している資料(マニュアル等(教材))
を自社用に分かりやすくアレンジされて,準備されていることでした。
また分からないことは,ノートに細目にメモされて,どんどん質問されてくるその姿勢です。
またISO取得後の忘年会では「良いコンサルタントに出会いって良かった」と言って頂き,
本当に涙が出る想いで,夜遅くまでお酒を頂きました。
また静岡県のP社様(自動車部品の組立,検査)にISO14001の指導をさせて頂き, 昨年末の
最終の二次審査の終了後に,管理責任者の方より,「私たちなりに,取得に向けて頑張ってきました」
「取得に向けて立ち上げた組織も成長したと実感しています」という嬉しい声を頂きました。
このP社は,すでにISO9001を取得されていましたが,社長のおっしやるには,ISO9001の
取得はしているものの,運用がうまくいっていない,二度とこのISO14001の取得では
失敗はしたくないということでした。
そうなんです。
ISO取得構築時の組織への展開の成否が,取得後の運用の成否に係ってくるのです。
この静岡のP社様には引き続きISO17025の指導をさせて頂いています。
指導してISOを取得された方に私がお話しすることは,「継続は力なり」ですと。
多くのことに取り組むのではなく,焦らないで少しずつISOを運用レベルアップしていって
下さいと。
あまりにもISOに期待し過ぎて途中で,息が切れてしまっては大変ですから。
③ISOを取得された会社の良い声,悪い声
ISO取得した会社の社長様から,
・社員自ら会議や打ち合わせを行うようになったとか,
・場内の倉庫や敷地が何十年ぶりに綺麗になったとか
・社内が活気づいてきたとか
それは喜ばれ,ISO取得のメリットを言って頂きます。
ところが現在の建設業界の公共工事の激減により,
・ISOを持っていても何にもならない」
・ISOはやめようと思っている
という声を,ある審査員の人が,審査に行って建設会社の社長、管理責任者の方からよく聞く
そうです。
そんな話を聞くと,私は,ISO取得の構築で多くの人の参加がされなく取得されてしまった
のではないだろうか?ISO取得のメリットが社長,管理責任者の方に伝わっていないのではと。
ISO取得のメリットをどれだけ伝えることができるかどうかが,私たちISO関係者に責任が
あるように思えてならない。
ISO取得のメリットがネット上で多く一般的に語られている。
でもそんな一般的なメリットの羅列では,お客様は,納得していただけない。
9.地方の建設会社のISO取得のメリットとその運用について簡単にその導入部分について
書きます。
①経営事項審査の評点アップについて
ISOを取得する動機メリットが経審の評点獲得,アップ等が目的でしたら,社内でこんなことを
実施してみて下さい。
経審の評点対策は,社長あるいはある担当者が一人で行われているかもしれません。
でも経審の評点計算に工事部全員も参加して検討するのです。
技術者にとって,経審というのは,ほど遠い
テーマで関心がないと思われがちですが,沖縄県のH建設会社様でISO9001,ISO14001に
続いて,OHSAS18001の取得指導をさせて頂いたあとに,次に技術者20名を含めて経審の評点
についての勉強会の指導をさせて頂きました。
多くの技術者が関数電卓で,評点計算の仕組みを,理解され,自社の会社で売上高がどれだけ必要である
とか,現場サイドでどれだけの利益を出さなければならないかが,会社の経営の観点から分かり,
工事の施工にあたる現場代理人としての責任感が持たれました。
よくこの経審の評点アップの方法について聞かれますが, 評点アップの方法は,この方法を使えば,
例えば未成工事支出金や完成工事未収入金は少ない方が良いとか, 未成工事受入金は少ないほうが良いとか,といった簡単な思考では,経審の評点は,上げらません。それは個々の会社で,その方法は全部違うのです。
一人一人の顔が違うのと同じように。
10.利益の出るISO取得とは?
利益が出るということは,算式で示しますと,完成工事高―完成工事原価―販売費及び一般管理費―(略)
=当期利益で計算できます。
指導している中で感じることは,会社の利益と現場サイドの会社の利益に大きな差違が見られることです。
現場サイドは,実行予算(含販売費及び一般管理費の%計上)を組んで現場で
利益が出るように工事施工を進めていきます。何も問題がなければ実行予算通りに利益もでてきます。
ところが実際,会社の決算書が出来上がると,会社が赤字の数字が出てしまっているという相談を受けます。
このような事態がどうして起こるのでしょうか?
私が思うに,
・実行予算を組む時の現場共通費の損料計算の仕組みが甘かったり,
・会社の販売費及び一般管理費の現場負担の計上が甘かったり
した原因から起こっているように感じられます。
ISOでいうところの内部コミュニケーションの欠落から起こっているのです。
現場でどれだけの利益を出せば会社が儲かるのか,まず全社員で確認する必要があります。
このことも利益の出せるISOにつながるものと思います。
11.品質目標の工事成績評価点数のアップ対策について
ISO9001の構築をしていく中で,工事部の品質目標を何にすれば良いかということになった時に,
よく設定されるのがこの工事成績評価点数のアップを品質目標に設定されるところが多いのですが,
その工事点数を上げるための対策が十分でないがために,ISO9001の品質目標が,形だけになって
いる会社もあります。
社長より工事の評価点数を上げる指示がでているにも関わらず,現場代理人として,どうして良いのか
分からないのが実状です。
現在,この工事成績評価点数のアップ対策が各地でセミナーが開かれるほどで建設会社の皆様には,
大変興味のあるところで,避けては通れない課題でもあります。
そこで,まだ,この工事成績評価点数アップについて,取り組みをされていないという方は,まず
工事部全員で所在地の『○○県請負工事成績評定要領』に目を通され,そして受注された現場特有の
工事内容を把握され下記の工事成績評定項目について,ISOの内容を活用され,例えば環境側面の
抽出からその対策,また安全面からは,危険源の抽出,リスクアセスメント,リスク低減策の決定まで,
この成績評価数を上げるための対策を品質目標達成のための具体的手段として採用されることを
お勧めします。
現場の担当者だけでなく,多くの技術者で,その工事成績評価点数を上げるのにはどうすればよいか
考えるのです。
(工事成績評定)
1.施工体制 ①施工体制一般 ②配置技術者
2.施工状況 ①施工管理 ②工程管理 ③安全対策 ④対外関係
3.出来形及び出来ばえ ①出来形 ②品 質 ③出来ばえ
4.工事特性 施工条件等への対応
工事特性は、当該工事特有の難度の高い条件(構造物の特殊性、特殊な技術、
都市部等の作業環境・社会条件、厳しい自然・地盤条件、長期工事における安全確保等)に対して
適切に対応したことを評価する項目である。
5.創意工夫
創意工夫は、企業の工夫やノウハウにより特筆すべき評価内容があった場合に評価する項目である。
6.社会性等 地域への貢献等
12.総合評価落札方式(簡易)での施工計画の提案
工事を受注して作成される施工計画書に対して,工事を受注する前に,発注者から求められる
施工計画の提案書を作成する必要があります。この提案書の出来の違いより工事の受注の機会
が広がります。
施工計画の提案は,過去の工事経験の知識が多く影響しますが,この提案書の作成の時にも,
私は,ISO9001,ISO14001,OHSAS18001の取得の会社と取得されていない
会社では,ちょっとした時に,その知識が良い提案内容を浮かべるヒントを与えてくれると思います。
ISO9001,ISO14001,OHSAS18001の取得が活かされます
(例)工事騒音の低減に関する取組み | (例)外部建具取り外し時における室内の安全性、 防犯性及び第三者に対する安全に配慮した取組み | |||
発生する工事騒音 | 低減させる具体的な取組み | 安全措置 | 安全に配慮した具体的な取組み | |
13.この原稿を書いているときに1本の相談の電話が入り,その建設会社の社長様と会ってきました。
相談の内容は,シルバーセンターから紹介された70才近くの人が,朝現場に行く途中で,
一旦停止違反を犯し,人身事故を起こしてしまい,本人自身が,1ケ月以上も意識が戻らない状況で,
親族からの労災の手続きをして欲しいという申し出に対しての相談でした。
ある相談事では,アドバイスしましたが,「詳しくは,専門家に相談してみて下さい。」とその会社を
あとにしました。工事現場で起きた事故ではなく,通勤災害です。
今,建設会社様の中では,労働安全衛生マネジメントシステム(OHSAS18001,
COHSMS)を取得される方が,少しずつ増えてきていますが,今回のこの事故も危険源の特定から
リスクアセスメントを実施し低減策の実施を会社で行っていたらもしかしたら,防げたのではないか
と思ったりしました。
14.どうでしょうか?ISO9001,ISO14001,OHSAS18001の取得は,
建設会社において,多くのISO取得のメリットを生むことができると思いませんか。
15.結び〜建設業界のISOを普及させるための提案
私が思うのに, 建設業界のISOを普及させるために,資格審査の評価に,二者監査(建設会社相互の
審査)の導入を期待しています。(審査機関の審査報告書を求めている県は,ありますが)
建設業界以外では, 二者監査はよく行われています。メーカーが取引先の監査を行い,仕事を発注するかどうかを決めます。
建設業界において,資格審査の提出書類に,二者監査の報告書を提出させることにより,ISOを定着
させていく方法であるのではと思っています。
以上,地方の中小建設会社のISOの取得の運用・メリットについて書かせて頂きました。
(有)都城情報ビジネス 代表取締役 松元義仁
